インバウンド対応に使える補助金 — 個人店が現実的に狙える2制度と、締切から逆算する準備

「やった方がいい」で止まるのは、たいてい費用のところ
多言語のメニューを用意した方がいい。キャッシュレスを増やした方がいい。予約をネットで受けられた方がいい。ここまでは、たいていのお店の方がもう分かっています。止まるのは、その次の「で、いくらかかるのか」のところです。
結論から言うと、観光客向けの小さなお店が現実的に狙える国の制度は2つです。小規模事業者持続化補助金と、デジタル化・AI導入補助金2026。この記事は、どのツールを選ぶかではなく、その費用をどこから引っぱってくるかの話をします。
今すぐの1分タスク
制度の中身より先に、自店の窓口を確かめるほうが早く進みます。持続化補助金は、同じ制度なのに申請サイトも相談先も2つに分かれているためです。
「(自店の市区町村名) 商工会議所」で検索して、自店の所在地に商工会議所があるかを確認してみてください。あれば商工会議所の地区、なければ商工会の地区にあたることが多く、それによって申請先のサイトが変わります。
なぜ今この話か(30秒で)
2026年7月時点で、直近の締切が2つ動いています。
デジタル化・AI導入補助金2026の1次締切は2026年8月25日(火)17:00。交付決定の予定日は10月7日で、事業の実施期間は2027年3月31日17:00までとされています。
小規模事業者持続化補助金 第20回は、申請受付が2026年11月5日(木)から12月15日(火)17:00。ただし後述する様式4の発行受付が12月4日締切なので、実際に動き出す期限はもっと手前にあります。第19回(2026年3月6日〜4月30日受付)の採択発表が2026年7月頃だったところです。
秋の閑散期に多言語まわりを整えたい、という段取りなら、いま見ておく時期にあたります。
個人店が現実的に使える2制度
| 小規模事業者持続化補助金 | デジタル化・AI導入補助金2026 | |
|---|---|---|
| 何に使うか | 販路開拓の取り組み全般 | 事務局に登録されたITツールの導入 |
| 直近の締切 | 第20回:2026年12月15日 17:00 | 1次:2026年8月25日 17:00 |
| 申請の相手 | 商工会 または 商工会議所 | IT導入支援事業者 |
| 観光客向けの使いみち例 | 多言語メニュー・看板・チラシ、店舗の小規模な改装 | 予約システム、POSレジ・決済端末(枠による) |
※ 2026年7月時点。金額・締切とも回次ごとに変わります。
小規模事業者持続化補助金(第20回)
通常枠は上限50万円・補助率2/3が基本です。ここにインボイス特例で50万円、賃金引上げ特例で150万円が加算され、両方が乗ると最大250万円まで上がる設計になっています。赤字の事業者は補助率が3/4に引き上げられます。
観光客向けのお店にとって現実的なのは、多言語のメニューや看板、店頭のPOP、小規模な改装といった「販路開拓の取り組み」をひとまとめにして出す形です。
そしてこの制度でいちばん誤解されやすい一点——広報費とウェブサイト関連費はそれぞれ上限30万円(税込)で、この2つだけでの単独申請ができません。「翻訳したサイトを作りたいから、その費用だけ申請する」は通らない、ということです。
もうひとつ、この制度は商工会・商工会議所が出す事業支援計画書(様式4)が要ります。第20回の発行受付締切は2026年12月4日(金)。相手のある書類なので、申請締切から逆算するのではなく、相談に行く日から逆算してください。
デジタル化・AI導入補助金2026(旧・IT導入補助金)
まず名前です。IT導入補助金は2026年から「デジタル化・AI導入補助金2026」に変わりました。検索すると旧名称のままの解説が上位に残っているので、読む前に日付と名称を確かめてください。枠は通常枠、インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)、セキュリティ対策推進枠、複数者連携デジタル化・AI導入枠が設けられています。
この制度の性格は、持続化補助金とはっきり違います。補助の対象になるのは、事務局に登録されたITツールだけです。好きなツールを買って後から申請する形ではなく、登録済みのツールを扱うIT導入支援事業者と組んで申請します。
観光客向けのお店なら、予約システムや、枠によってはPOSレジ・決済端末が候補に入ります。どの予約ツールが自店に合うかは観光客向け予約ツールの比較、どの決済を揃えるかは観光客向けキャッシュレスの国別比較にまとめてあるので、この記事では「その候補が登録ITツールに入っているかを支援事業者に聞く」ところまでにとどめます。
国・都道府県・市区町村の3層で探す
補助金は国の制度だけではありません。3層あると思って探すと漏れません。
- 国。上の2制度がここです。金額が大きく、書類も多い層。
- 都道府県。観光の受入環境整備にあてた枠があることが多い層です。たとえば東京都には宿泊施設・飲食店・免税店などを対象に、多言語対応を含めて補助率1/2・上限300万円という設計の補助があります。金額も条件も自治体ごとにまったく違います。
- 市区町村。数万円〜数十万円の小さな枠が、いちばん見つけにくい層です。商店街単位の看板補助や、翻訳・多言語表示の補助が突然出ることがあります。
探し方は、「(都道府県名) インバウンド 補助金」「(市区町村名) 観光 補助金 令和8年度」で検索し、自治体の公式サイトのものだけを開くのが速いです。まとめサイトは年度が古いまま残っていることが多いので、最終確認は必ず自治体か事務局のページで行ってください。
なお観光庁は令和8年度予算で、オーバーツーリズムの未然防止を含む観光地の受入環境整備に100億円を配分しています。ただし「地域観光資源の多言語解説整備促進事業」のように、自治体・DMO・観光施設が申請者となる事業も多く、個人店が直接申請する対象とは限りません。地域として整備が入る話と、自店が申請する話は分けて考えると混乱しません。
対象になるもの・ならないもの
制度をまたいで共通する線引きが4つあります。
- 買うものは対象、使い続ける費用は原則として対象外。ツールの導入費や制作費は載りますが、毎月の運用費・広告の出稿費・人件費は基本的に別扱いです。日々の集客にいくら回すかは月1万円のインバウンド広告予算の使い方のほうの話になります。
- 上限額は経費の種類ごとにも設定される。総額の上限だけを見ていると足が出ます。持続化補助金の広報費・ウェブサイト関連費が各30万円(税込)というのがその例です。
- 登録・認定の枠内でしか選べない制度がある。デジタル化・AI導入補助金は登録ITツールのみ。自分で見つけてきた海外製の便利なツールは、登録がなければ対象外です。
- 交付決定より前に発注したものは対象外。ここが最も多い取りこぼしです。詳しくは次の章にまとめます。
多言語メニューそのものの作り方は中国語メニューの作り方と韓国語メニューの作り方にあります。補助金を待たずに今日できる部分も多いので、費用がかかる範囲と、かからない範囲を先に分けておくと申請書も書きやすくなります。
申請前に潰しておく落とし穴
- 窓口を間違える。持続化補助金は商工会と商工会議所で申請サイトが別です。自店の所在地で決まります。
- 様式4のリードタイムを見ていない。事業支援計画書は相手が出す書類です。締切直前に駆け込むと発行が間に合いません。
- 支援事業者と組む前に買ってしまう。デジタル化・AI導入補助金は、IT導入支援事業者と一緒に申請する制度です。先に契約を済ませてしまうと、その分は対象になりません。
- 後払いを見込んでいない。原則として、先に自分で支払い、実績報告のあとに補助分が入ります。手元の資金が一時的に要ります。
- 採択を前提に計画を組む。審査がある以上、申請=採択ではありません。落ちても回るところから着手しておく、が安全です。
- 去年の記事の数字で判断する。回次ごとに上限も締切も変わります。最後は必ずその回の公募要領を開いてください。
補助金で入れたツールが、半年後に止まる問題
もうひとつ、申請の前に見ておきたいことがあります。
補助金は買うためのお金であって、続けるための仕組みではありません。多言語のメニューを作っても、予約システムを入れても、更新する人と時間がなければ、半年後には情報が古いまま残ります。観光客から見えるのは、導入した事実ではなく、いま表示されている中身のほうです。
だから申請書を書く前に、一度だけ考えておくと後が楽になります。これを入れたあと、毎週触るのは誰か。
Kokoponは、Googleマップ・Instagram・LINEへの発信を1つのメッセージから束ねて、翻訳して各チャンネルに出すところを引き受けています。補助金の対象になるツールではありませんが、補助金で整えた入れ物が空のままにならないように、毎週の声かけで拾っていく側の役割です。伴走してきた範囲では、入れたものが止まるかどうかは、導入時の予算より「思い出す機会があるか」で分かれているように見えます。
今週試すこと
- 自店の所在地が商工会と商工会議所のどちらの地区か確認する
- デジタル化・AI導入補助金2026の1次締切(8月25日17時)に間に合う使いみちがあるか考える
- 「(自分の都道府県名) インバウンド 補助金」で検索し、自治体公式のページを1つ開く
- 補助金を待たずに今日できる多言語対応を1つ決めて、先に手をつける
Kokoponは、Googleマップ・Instagram・LINEへの発信を1つのメッセージから束ね、更新の止まった欄を毎週の声かけで拾っていくAIコーチです。詳しくはトップページからご覧ください。
参考
よくある質問
- 個人店でも使えるインバウンド対応の補助金はありますか
- 国の制度では、小規模事業者持続化補助金とデジタル化・AI導入補助金2026の2つが現実的な候補です。前者は販路開拓の取り組み全般(チラシ、店舗改装、多言語のメニューや看板など)、後者は事務局に登録されたITツールの導入が対象です。あわせて都道府県・市区町村の観光受入環境の補助も探す価値があります。
- IT導入補助金は2026年もありますか
- 名称が変わって続いています。2026年は「デジタル化・AI導入補助金2026」で、通常枠、インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)、セキュリティ対策推進枠、複数者連携デジタル化・AI導入枠が設けられています。検索すると旧名称のままの解説が多く残っているので、日付と名称を確認してから読んでください。
- 多言語メニューの翻訳や印刷だけで補助金は使えますか
- 持続化補助金では、広報費とウェブサイト関連費はそれぞれ上限30万円(税込)で、この2つだけの単独申請はできない決まりです(2026年7月時点)。翻訳や印刷は、販路開拓の取り組み全体の一部として組み立てる形になります。
- 申請すれば必ずもらえますか
- いいえ。どちらの制度も審査があり、申請すれば採択されるものではありません。また採択されても原則は後払いで、先に自分で支払い、実績報告のあとに補助分が入ります。手元の資金が要る点は申請前に見込んでおいてください。
- 申請の窓口はどこですか
- 持続化補助金は、自店の所在地が商工会の地区か商工会議所の地区かで申請サイトも相談先も分かれます。デジタル化・AI導入補助金は、事務局に登録されたIT導入支援事業者と組んで申請する形です。まず自店がどちらの窓口かを確かめるところから始まります。
- いつから準備すればいいですか
- デジタル化・AI導入補助金2026の1次締切は2026年8月25日17時です。持続化補助金の第20回は申請受付が2026年11月5日からですが、商工会・商工会議所が出す事業支援計画書(様式4)の発行受付が12月4日締切のため、11月に入ってから動き出すと間に合わないことがあります。






