宿と観光案内所から紹介される店になる:渡す1枚に書く6項目と、案内所の「公平・中立」ルール

観光客は、着いてから人に聞きます
旅の予定は出発前にだいたい決まっていますが、夕食の店と、空いた2時間の使い道はたいてい決まっていません。それを決めるとき、観光客は宿のフロントか、駅前の観光案内所で「この近くで」と聞きます。
先に結論を書きます。この経路は、頼み込んで手に入れるものではありません。案内所は制度上、特定の店だけを勧めることができないからです。できるのは、複数の店を挙げるときの材料を先に渡しておくことです。
この記事では、その理由と、渡す1枚に書く6項目、宿・旅館・ゲストハウスごとの違い、そして自分が案内する側にまわる方法までを整理します。有料広告やSNSとの比較は集客チャネル10種の比較で扱っています。この記事は、その比較表に載っていない経路の話です。
今すぐの1分タスク
「JNTO 認定外国人観光案内所」で検索して、自分の店から歩ける範囲に何件あるか数える。
2026年6月末時点で、全国に1,504件あります。ご近所に1件もない地域もありますが、観光動線の上にある店なら、たいてい徒歩圏に見つかります。
「優先的に紹介してもらう」は、制度上できません(30秒で)
ここが、この経路のいちばん大事なところです。
JNTO認定の観光案内所には、認定の要件として公平・中立な観光案内が定められています。「自社商品や提携先の商品に偏ることなく訪日旅行者の要望に応じて、適切な案内ができることが求められます」とされ、複数の案内方法があるときは、できる限り複数の選択肢を提示する必要があるとされています。
認定審査の考え方には、そのまま店舗紹介の例が載っています。
(質問例)この近くでラーメンを食べたい 望ましい例:好みの味、アレルギーや食べられない食材(ハラル、ヴィーガン)等を確認しながら、各ラーメンの特徴(豚骨、醤油、味噌等)と共に複数の店舗を紹介する。 望ましくない例:提携先等のラーメン店のみを紹介する。
つまり、独占的に紹介してもらう話は最初から成立しません。この要件はカテゴリー1〜3にもパートナー施設にも等しくかかります。
同時に、この例文は答え合わせにもなっています。案内所のスタッフは好みの味・食べられない食材・店ごとの特徴を確認しながら答えます。ということは、そこで挙げてもらうために必要なのは熱意ではなく、条件に照らせる情報です。
案内所に渡す1枚:6項目
案内所が答える形式から逆算すると、書くべきことは絞れます。次の6項目を1枚にまとめます。
| 項目 | 書くこと | 例 |
|---|---|---|
| 1. 何の店か | ジャンルではなく特徴まで | 出汁から作る和食/醤油ラーメン/登り窯の陶芸体験 |
| 2. 価格帯 | 一番出るものの実売価格 | 昼1,200〜1,800円、夜3,000円前後 |
| 3. 所要時間 | 滞在の目安 | 食事40分、体験は2時間 |
| 4. 英語対応の手段 | できる/できないではなく、方法 | 翻訳アプリで対応、英語メニューあり |
| 5. 食事制限で言えること | 断定できる範囲だけ | 卵不使用の品が3つ、豚肉不使用の対応可、完全なハラル認証はなし |
| 6. 定休日と徒歩分数 | 最寄り駅からの実測 | 水曜定休、〇〇駅から徒歩8分 |
4番と5番が、他の店との差がいちばん出るところです。英語対応は「できます」と書くより、方法を書いたほうが伝わります。翻訳アプリで受けている店はそう書いて構いません。むしろそのほうが、案内所も安心して観光客に渡せます(オーナー英語ゼロの受け方)。
5番も同じで、無理に対応可と書かないことが大事です。言える範囲だけを正確に書くやり方はヴィーガン・ハラルの誠実な伝え方にまとめています。
紙は日本語と英語の2枚にします。日本語の1枚は案内所のスタッフが読む実務用、英語の1枚は観光客にそのまま渡せる用です。
宿・旅館・ゲストハウスは、相手ごとに違います
同じ「紹介してもらう」でも、相手によって成り立ち方が変わります。
1. ホテルのフロント
聞かれるのは滞在中の困りごとが起点です。「遅くまで開いている店は」「子ども連れで入れる店は」といった条件つきの質問が多いので、条件に一致する項目があると挙がりやすくなります。渡すなら1枚の紙より、条件が拾いやすい箇条書きのほうが向いています。
2. 小さな宿・旅館の方
こちらは個人の推薦に近い形です。実際に食べた店、話したことのある店が挙がりやすくなります。紙を置くより先に、一度来てもらうほうが早いこともあります。
3. ゲストハウス
共有スペースに地図やチラシを置いている宿が多く、紙が物理的に置ける場所があるのが特徴です。宿泊者が自分で見て決めるため、英語の1枚がそのまま働きます。
訪ねる時間帯は、チェックイン前の昼過ぎが無難です。夕方以降は相手がいちばん忙しい時間帯にあたります。
そして、紹介料を渡す設計にはしないでください。相手の立場を難しくしますし、認定案内所では公平・中立の要件と正面からぶつかります。
紹介された観光客が、最後に見るのはGoogleマップ
紙を見て「行ってみよう」となった観光客は、そのあとほぼ必ず地図アプリで店名を調べます。ここで紙と地図の内容が食い違うと、そこで止まりやすくなります。
揃えておくのは3つです。
- 営業時間と定休日(臨時休業も含めて、紙と同じ状態にする)
- 写真(紙に書いた特徴が写っている1枚があるか)
- 説明文(価格帯と英語対応の書き方を紙と揃える)
Googleビジネスプロフィール側の操作手順そのものは飲食店の完全ガイドと営業時間を変える3分手順にあります。ここでやるのは、紙に書いたことと同じ内容が地図にも載っている状態を作ることだけです。
そもそも観光動線の上にいるのに素通りされている場合は、紹介以前の原因があることもあります。心当たりがあれば素通りされる5つの原因を先に見てください。
自分が「案内する側」になる:JNTO認定パートナー施設
紹介してもらう側だけでなく、案内する側として認定を受ける道もあります。
パートナー施設は「観光案内を専業としない施設であっても、外国人旅行者を積極的に受け入れる意欲があり、公平・中立な立場で地域の案内を提供」する区分です。2026年6月末時点で全国に439件あります。
小さな店に関係するのは、この区分に付いていない要件です。法人または地方公共団体が運営していること、交通結節点や著名観光地という立地、開所日数——これらは認定審査の考え方でカテゴリー1〜3の欄に印が付いており、パートナー施設の欄にはありません。適用の可否は申請時に確認してください。
満たす必要があるのは、主に次の3つです。
- 公平・中立な観光案内。自店だけを勧める場にはできません。
- 多言語パンフレットと多言語地図の常備。立地する地域や近隣の自治体・観光協会等が発行するものを集めることが必須とされ、特定の施設のパンフレットだけ、日本語だけ、ネットの情報を印刷したものだけでは認定できないとされています。
- 英語で案内できる体制。対面に限らず、ビデオ通話・多言語翻訳システム・電話通訳サービスのいずれかで足り、常時対応でなくても可とされています。
費用と手間はこうなっています。
| 内容(2026年7月時点) | |
|---|---|
| 認定料・登録料・年会費 | いずれも無料 |
| 申請方法 | 専用オンラインサイトのみ(郵送・メールは不可) |
| 標準処理期間 | 約60日 |
| 更新 | 3年ごと |
| 認定後 | JNTOがリストと個別ページを作成し、訪日旅行者への周知が図られる |
最後の行が、この手のいちばんの実益です。自店の発信の外側から見つけてもらう経路がひとつ増えます。観光庁の「手ぶら観光」共通ロゴマークと同じ構図で、公的な一覧に載るという形の露出です(荷物預かりの判断と見せ方)。
なお、案内所の入口に掲げるJNTOのシンボルマークは、認定審査の考え方ではカテゴリー1〜3の項目として扱われています。パートナー施設の欄には印がありません。
やってはいけないこと
- 「うちを優先的に」と頼む。制度の要件に反する依頼なので、相手を困らせるだけになります。
- 紹介料や謝礼を渡す。関係が続かなくなるうえ、認定案内所では要件と衝突します。
- できないことを「対応可」と書く。案内所は自分の信用で渡しています。一度食い違うと、次から挙がらなくなりやすくなります。
- 情報が古いまま置きっぱなしにする。定休日や価格が変わったら、紙も差し替えます。置いた時点で終わりではありません。
- 1度断られて終わりにする。ラックの空きや時期で事情は変わります。季節が変わったらもう一度で構いません。
今週試すこと
- 徒歩圏の認定観光案内所を1件調べ、開所時間を確認する
- 6項目を日本語で1枚に書き出す(レイアウトは後回しで構いません)
- その1枚を翻訳して英語版を作る
- 紙に書いた営業時間・価格帯・英語対応が、Googleマップの情報と揃っているか見比べる
Kokoponは、LINEで送った1通を多言語に翻訳して、Googleビジネスプロフィール・Instagram・LINE公式に同時に届けるサービスです。紙で渡した情報と地図の内容を揃えておきたいときにも使えます。詳しくはトップページからご覧ください。
参考
よくある質問
- 観光案内所に「うちを優先的に紹介してください」と頼めますか
- 頼んでも通りません。公平・中立な観光案内はJNTO認定の要件で、認定審査の考え方では「提携先等のラーメン店のみを紹介する」ことが望ましくない例として挙げられています。裏を返せば、複数の店を挙げるときの材料さえ渡しておけば、その中に入る余地はあります。
- 案内所に置いてもらう紙は、何語で用意すればいいですか
- 日本語と英語の2枚があれば足ります。読むのは案内所のスタッフなので日本語の1枚が実務用、英語の1枚は観光客にそのまま渡せる用です。中国語・韓国語は必要になってから足す順番で無理がありません。
- チラシは何枚くらい持っていけばいいですか
- 最初は数枚で十分です。ラックの有無や置ける枚数は案内所ごとに違うため、まず1枚を見てもらい、置けるかどうかを聞くところから始めるほうが確実です。
- ホテルのスタッフに紹介料を払うべきですか
- おすすめしません。相手の立場を難しくしますし、認定案内所の場合は公平・中立の要件と正面からぶつかります。続く関係にしたいなら、正確で新しい情報を渡し続けるほうが結果的に早いはずです。
- 小さな個人店でもJNTO認定パートナー施設になれますか
- パートナー施設は「観光案内を専業としない施設」が対象です。法人であることや立地、開所日数の要件は認定審査の考え方でカテゴリー1〜3の欄に印が付いており、パートナー施設の欄にはありません。ただし公平・中立な案内、周辺自治体等が発行する多言語パンフレットと地図の常備、英語で案内できる体制は必要です。適用は申請時に確認してください。
- パートナー施設になるには英語のできるスタッフが必要ですか
- 常時の対応までは求められていません。多言語翻訳システムや電話通訳サービスの利用でも要件を満たすとされていて、常時対応でなくても可とされています。






