海外からのバリアフリー旅を取りこぼさない — Google マップで「行ける店」と見つけてもらう3つの整え方

ルカム ジョスラン

ルカム ジョスラン

Utsubo代表 / Kokopon創業者

2026年5月26日·19分で読めます
海外からのバリアフリー旅を取りこぼさない — Google マップで「行ける店」と見つけてもらう3つの整え方

「うちは段差があるから車椅子の方は無理」と思って、何も書いていない店が多い

鎌倉駅から徒歩7分の小さなカフェ。築40年の戸建てを改装した店構えで、入口に段差が2段あり、店内にも1段あります。トイレは1階ですが幅90cm。ご夫婦2人の運営で、改修予算はありません。

このカフェの店主の方と話していて、いちばん多い答えがこれです。「うちは段差があるから、車椅子の方は無理ですよ」。Googleビジネスプロフィールのアクセシビリティ属性は触ったことがなく、写真もありません。問い合わせメールも英語で答える自信がなく、放置気味です。

でも、海外からの観光客のうち、車椅子やベビーカーを使う方、足腰の弱った高齢の方、補助犬同伴の方、静かな席を希望される方の合計は、思っているより多いのが実情です。そして、その方たちはお店の前に立つ前に、Googleマップで「行ける店かどうか」を判断しています

判断材料がない店は、判断材料がある店に流れます。たとえ実際は「行ける」店でも、Googleマップで「行けるか分からない」と表示されている時点で、別の店が選ばれてしまうのです。

今すぐの1分タスク

自分のスマホでGoogleマップを開き、アカウントアイコン→設定→ユーザー補助設定→「車椅子対応の場所」をONにしてから、自店を検索してみてください。

車椅子アイコンが表示されるか、「対応なし」と表示されるか、それとも何も情報がないか。観光客が来店前に見ている画面は、これとほぼ同じです。

なぜ「行けるか/行けないか」をハッキリ伝える方が選ばれるのか(30秒で)

海外からの観光客は、来店前に「自分はこの店に入れるかどうか」を具体的に確認しています。段差があるか、通路は通れるか、トイレは使えるか、補助犬は受け入れてくれるか。これらは見えない不安として旅行体験全体にのしかかります。

ここで、店側がよくやってしまう3つの対応があります。1つ目は「何も書かない」。2つ目は「バリアフリー対応」と曖昧に書く。3つ目は「車椅子の方はご相談ください」とだけ書く。この3つはすべて、観光客側の判断を不可能にします

代わりに、Kokopon が観察している中で機能している伝え方は「行ける/行けない/部分的に行ける」の3段階で正直に書くことです。「2段の段差があります。スタッフが携帯スロープで対応できます」と書く方が、「ご相談ください」より遥かに来店判断を早くします。

これはヴィーガン・ハラル対応の「誠実なシグナル」と同じ考え方です。ヴィーガン・ハラル対応がなくても観光客に選ばれる、小さなお店の誠実な伝え方 では、対応していないことを誠実に伝える方が、対応していると曖昧に書くより信頼される、という話をしました。本記事は、それを身体・感覚のアクセシビリティに広げた延長線です。

3つの整え方

1. GBPのアクセシビリティ属性を正直に設定する

Googleビジネスプロフィール(GBP)には、車椅子に関する属性が5つあります。

  • 車椅子対応の入口(wheelchair_accessible_entrance)
  • 車椅子対応の座席(wheelchair_accessible_seating)
  • 車椅子対応のトイレ(wheelchair_accessible_restroom)
  • 車椅子対応の駐車場(wheelchair_accessible_parking)
  • 車椅子対応のエレベーター(wheelchair_accessible_elevator)

Google公式ヘルプの判定基準を整理すると、「あり」を選ぶ条件はおおむね次の通りです。

  • 入口:幅1m以上、段差なし、または常設スロープあり、または取り外し可能なスロープが用意されている
  • 座席:店内の主要エリアに段差がなく、車椅子のまま着席できるテーブルがある
  • トイレ:トイレ入口の幅が1m以上、段差なし。個室の入口幅も1m以上
  • 駐車場:車椅子対応の駐車スペースが用意されている
  • エレベーター:建物にエレベーターがあり、車椅子で利用可能

この基準を満たさない項目は、正直に「なし」を選びます。設定すべきでない、ではなく「なし」を選ぶこと自体が discovery signal の一部になります。

なぜなら、Googleマップには「車椅子対応の場所」を強調表示するフィルター機能があり、2020年5月21日に日本でも提供開始されました。現在、日本国内では100万件以上の場所でアクセシビリティ情報が登録されています。このフィルターをONにしたユーザーは、属性が「対応なし」の店を最初から候補から外せます。

例:京都の小さな茶店が「車椅子対応の入口:なし、座席:なし、トイレ:なし」と正直に設定。フィルターONのユーザーには表示されなくなりますが、その代わり「行ける店」を探していた別のユーザーに、近隣の対応店として表示される機会が増えました(観察)。

「全部なしと書くと客が減るのでは」と思われるかもしれませんが、判断材料がない店は判断不能で選ばれないのが現実です。属性は「あり」に偏らせるのではなく、実態通りに記入する方が、お店の信頼の土台になります。

設定手順は、GBPで「プロフィールを編集」→「その他」→「ユーザー補助」を開き、5項目に「はい/いいえ/不明」で答えていくだけです。所要時間は10分。一度設定すれば、改修するまでは触る必要はありません。

2. 写真で「実際の入り方」を見せる

属性設定だけでは伝わらないことがあります。それは「段差は2段だが、1段あたり10cm程度」「通路は60cmだが、椅子を引けば80cm確保できる」「トイレは狭いが、入口幅は95cm」のような細部です。

これを伝えるのは、写真です。ただし、店内のきれいなインテリア写真ではありません。実際の入り方が分かる、ステージングしない広角写真が3枚必要です。

  • 写真1:入口を外から、段差が分かる角度 — ドアを開けた状態、足元の段差が見える広角ショット
  • 写真2:店内通路を端から端まで — 椅子を引いた状態、テーブルとテーブルの間が見える
  • 写真3:トイレ入口を真正面から — ドアを開けた状態、入口幅と内部の広さが見える

撮影のコツは、明るい時間帯(午前10時前後)に自然光で撮ること。広角モードで撮ること。ステージングしないこと。「うちの店、ここに段差があります」とそのまま見せる方が、観光客には誠実に映ります

例:ある観光地の和菓子店が「入口の段差15cm」と分かる広角写真をGBPに追加。問い合わせメールが「ベビーカーで入れますか」から「段差はスタッフが介助してくれますか」に変わり、来店判断が早くなりました(観察)。

きれいな店内写真は、地元客やリピーター向けには効きます。しかし「初めて来る人に行けるかどうかを伝える」目的では、段差・通路・トイレの実態写真の方が遥かに効きます。両方をアップロードしておくのが理想です。

ベビーカー・スーツケース・ハイヒール・足腰の弱った高齢の方も、同じ写真を見て判断します。1枚の写真が複数の客層に効くのが、この整え方の特徴です。

3. 英語1行で「対応/非対応/代替案」を伝える

属性と写真を整えたら、最後に英語1行を3カ所に置きます。

  • GBP説明文の末尾
  • 店内POP(A6サイズの紙1枚をレジ脇に)
  • 問い合わせメールの返信テンプレ

書き方の型は「対応の有無+代替案」のセットです。

例:

  • 「Wheelchair accessible entrance, but restroom is small.」
  • 「2 steps at entrance, staff can help with portable ramp.」
  • 「Strollers welcome inside; aisles are narrow.」
  • 「Restroom is small and not wheelchair-accessible. Nearest accessible restroom is at Kamakura Station (5 min walk).」

「No」だけで終わらせず、必ず1文の代替案を添えます。これがあるだけで、観光客側の判断は変わります。「行けないが、別の選択肢を教えてくれた店」として記憶に残り、別の機会に同じ街に戻ってきたとき、別のニーズで来店してもらえる可能性が残ります。

問い合わせメールの返信は、丸ごと1つテンプレを用意しておくのが現実的です。

例:返信テンプレ

“Thank you for asking. Our entrance has 2 steps, but staff can help with a portable ramp. Restroom is small and not wheelchair-accessible. Nearest accessible restroom is at XX Station (5 min walk). Would you still like to visit? We can prepare extra space at the window table if you let us know in advance.”

長くないテンプレ1つで、ほとんどの問い合わせに対応できます。改修しなくても、英語1行で観光客の判断を支えることはできます。

見えない配慮(hidden disability)への気づき

身体的なアクセスだけがバリアフリーではありません。見えない理由で配慮を必要としている観光客は、思っているより多くいます

  • 静かな席を希望される方:自閉症スペクトラム、聴覚過敏、PTSD、感覚過敏など。お店の喧騒、BGM、強い照明が苦手な方。「Window seat is the quietest spot」「Please ask staff for the quietest seat」とGBP説明文に1行添えるだけで、判断材料になります。

  • 補助犬同伴の方:盲導犬・介助犬・聴導犬は身体障害者補助犬法で受け入れ義務があり、飲食店も小売店も衛生上の理由で断ることはできません。「補助犬同伴OK/Service animals welcome」とGBPと店内POPに明示しておくと、観光客側の不安が減ります。

  • 聴覚に配慮が必要な方:筆談ボード1枚、指差しメニュー1冊、ジェスチャーで対応する余裕。「Communication via writing or pointing welcome.」の英語1行で伝わります。

  • 視覚に配慮が必要な方:メニューの大きい文字版を1部、スマホで読み上げ可能なテキスト版を用意。観光地の小さな店でも、A4 1枚で済むレベルから始められます。

特別な設備投資は不要です。英語1行のシグナルと、店員が手伝う準備で、多くの配慮ニーズはカバーできます。

ベビーカー・高齢・多世代ファミリーは同じ整え方で届く

「うちは車椅子の方はあまり来ないから、アクセシビリティの整え方は不要」と思われるかもしれません。でも、物理的なアクセスを必要とする層は車椅子だけではないのが実情です。

  • ベビーカー連れの欧米ファミリー観光客
  • ハイヒールで段差を避けたい方
  • 足腰の弱った高齢観光客
  • 大荷物のスーツケースを持った観光客
  • 妊娠中の方
  • 怪我で松葉杖を使っている方

これらの方たちは全員、「段差・通路幅・トイレ広さ」の同じ情報を求めています。1つの整え方が、複数の客層に同時に届くのが、この領域の特徴です。

特に欧米ファミリー観光客は、ベビーカーで入れる店を Google マップで選ぶ傾向が強く、「Strollers welcome」の1行があるだけで来店率が変わります。アクセシビリティの整え方は、特定の少数派ではなく、観光客全体の判断材料として機能していると考える方が現実的です。

やってはいけない3パターン

  • 改修できないからと「何も書かない」。「分からない」は「行けない」と同じ判断につながり、別店を選ばれます。書かないのではなく、現状を正直に書く方が選ばれます。
  • 「バリアフリー対応」と曖昧に書く。来店してから「実は段差がある」と判明すると、最も信頼を失うパターンです。「対応」という言葉は使わず、「入口の段差2段、スタッフが介助可能」のように具体的に書きます。
  • 「車椅子の方はご相談ください」とだけ書く。これは判断を観光客側に丸投げしている形で、結局来店されません。「ご相談ください」と書くのではなく、判断材料を先に出します。

続けるコツ:季節の店内変更に合わせて更新する

GBPのアクセシビリティ属性は、一度設定すれば1年以上触らない項目です。改修するまで放置で構いません。

写真と英語1行だけ、季節の変わり目に見直します。夏の入口扇風機・冬のドア閉め・障子の張替・暖簾の取り付けなど、店構えが変わったタイミングで写真を撮り直し、説明文に1行加えるかどうか判断します。

月1回、5分で十分です。「うちの店の入り方」は、観光客にとって最も知りたい情報の1つです。それを最新に保つだけで、見つけてもらえる確率が上がっていきます。

今週試すこと

  • 自分のスマホで「車椅子対応の場所」フィルターをONにして自店を検索する
  • GBPの属性「車椅子で利用可能」5項目を正直に設定(該当なしも含めて)
  • 入口・通路・トイレ入口の広角写真3枚を撮ってGBPにアップロード
  • GBP説明文と店内POPに英語1行を追加(「対応の有無+代替案」の型で)

Kokoponは、海外からの観光客に選ばれる小さなお店のための、Googleビジネスプロフィール・Instagram・LINE公式アカウントの多言語運用を1つにまとめるサービスです。詳しくはトップページからご覧ください。

参考

よくある質問

段差がある店でも、車椅子対応の属性は書いた方がいいですか?
該当なしのチェックを正直に入れる方が、Googleマップの車椅子フィルターから「行けない店」として除外されるため、観光客側の取りこぼしが減る傾向があります。同時に、説明文や写真で「常設スロープなし、ただしスタッフが携帯スロープで段差対応可能」のような代替案を添える形が現実的です。
バリアフリー対応していないのに「対応」と書くのはダメだと思いますが、何も書かない方が安全ですか?
何も書かないと観光客は「分からない」と判断し、明確に「対応」と書いた店を選びます。「2段の段差あり、スタッフが介助可能」「店内通路60cm、ベビーカーは折り畳みでお願いします」のように、現状を正直に英語1行で書く方が、来店前に判断してもらえます。
補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)が来店された場合、断ってもいいですか?
法令上は受け入れる義務があります(身体障害者補助犬法)。飲食店も小売店も含めて、衛生上の理由で断ることはできません。事前に「補助犬同伴OK」とGBPや店内POPで明示しておくと、観光客側も安心して来店できます。
ベビーカーと車椅子は、同じ属性で扱っていいですか?
Googleビジネスプロフィールには「ベビーカー専用」属性はなく、物理的なアクセス情報(入口段差・通路幅・トイレ広さ)はベビーカー利用者にも同じ判断材料になります。説明文や写真キャプションで「Strollers welcome, aisles are narrow」のように補足する形が現実的です。
静かな席を希望される観光客に、お店としてどう対応すればいいですか?
自閉症スペクトラム・聴覚過敏・PTSDなど見えない理由で静かな環境を必要とする方は増えています。「Window seat is the quietest spot in the shop」「Please ask staff for the quietest seat」のような英語1行をGBP説明文に添えるだけでも判断材料になります。特別な設備は不要です。
トイレが古くて狭く、車椅子では使えません。どう書けばいいですか?
「Restroom is small and not wheelchair accessible. Nearest accessible restroom is at XX (5 min walk).」のように、自店の制約+最寄りの代替施設の場所を添える形が現実的です。観光地であれば駅や公園に多目的トイレがあることが多く、その情報を店主が把握しているだけで観光客側の不安は大きく減ります。

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