「うちにインバウンドは無理」5つの誤解と現実:観光客動線にある個人飲食店オーナーへ

観光客が前を通っているのに、動けていませんか
「うちにインバウンドは無理」。観光地立地の個人飲食店オーナーさんから、最近よく聞く言葉です。
理由を聞くと、決まって5つのどれかが返ってきます。「英語できないから」「うちは地味だから」「観光客は単価が低いから」「翻訳メニューを作るのが面倒だから」「観光客はリピートしないから」。
5つとも、やる前の見積もりが過大すぎるか、前提が古いことが多いです。数字を当てると印象が変わり、それぞれに15分でできる最小行動が見つかります。
今すぐの1分タスク
読み進める前に、これだけ確認してください。
Google マップで自店を検索し、最初の3枚の写真と説明文を見る。次に、英語圏の観光客から見たとき、何を出している店か、いくらくらいか、が分かるかを自分の感覚でチェックする。
3秒で「分からない」と感じたら、それは英語ができない問題ではなく、情報が出ていない問題です。誤解1の入口がここにあります。
なぜ「無理」と思うか(30秒で)
2025年の訪日外国人数は記録的な水準まで戻りました。観光庁の訪日外国人消費動向調査では、飲食支出が1人あたり数万円規模で安定しています。
それでも個人店オーナーが動けない理由は、5つの心理ブロックにあります。「言葉」「見た目」「単価」「面倒」「リピート」——どれも実体験ではなく、「やったら大変そう」という見積もりが原因です。
数字で見ると、5つとも「思っていたより簡単」の側に寄ります。1つずつ反証していきます。
誤解1:「英語できないから無理」
最も多い誤解です。実体は「英語できないと観光客に何も伝えられない」という思い込みです。
現実:- 観光客側がGoogle翻訳カメラを準備して来店する場面が増えている
- 日本旅行前にダウンロードする翻訳アプリの上位は、Google翻訳・DeepL・Papago(韓国客)
- カメラを向けるとメニューがそのまま翻訳される機能は、2024年以降ほぼ全スマホで標準利用
「Hello」「This menu」「Thank you」の3語が言えるだけで、観光客側が安心して翻訳アプリを開きます。完璧な英会話は不要です。
誤解2:「うちは地味だから観光客は来ない」
次に多い誤解です。「映える店」「観光客向けの店」じゃないと選ばれないという思い込みです。
現実:- 訪日リピーターが探すのは「地元の人が日常で行く店」傾向
- インスタ映えする観光客向け店は1回目、リピートで選ばれるのは日常店
- 「地元客に人気」というシグナルは、観光客の安心材料になる場面が多い
- Google ビジネスプロフィールに「地元の常連客で賑わう店内」が分かる写真を3枚追加
- 写真1:開店直後の店構え(外観)
- 写真2:日常の店内(人がいる時間帯、後ろ姿でも可)
- 写真3:常連客が頼む定番メニュー
例:木曜の夜、カウンターに常連客が3人座って湯呑みを持っている横顔の写真。映えではなく、空気感が観光客に届きます。
誤解3:「観光客は単価が低い」
「観光客は安いランチだけ食べて帰る」という思い込みです。
現実:- 観光庁データでは、訪日客の1食あたり支出は¥2,000〜¥5,000帯が中心
- 体験を求めて来る観光客は、地元店のディナーで¥5,000〜¥10,000帯を選ぶ場面が増えている
- 「現地の人と同じ価格で食べたい」という志向は、欧米客で特に強い傾向
- ランチ単価帯とディナー単価帯を英語でGBPに明記
- 例:「Lunch ¥1,200〜 / Dinner ¥4,500〜」
- 「Set menu」「À la carte」を併記すると判断が早くなる
単価を隠すと、安いと思って来た観光客が会計で動揺するパターンと、高いと思って入らないパターンの両方が起きます。明記したほうが、来てほしい客層が来やすくなる傾向です。
誤解4:「翻訳メニューを作るのが面倒」
「メニュー全部を英語にするのは無理」という思い込みです。
現実:- 全品翻訳は不要、主力5〜10品で観光客の判断材料の8割をカバーできる傾向
- スマホで写真を撮ってGoogle翻訳カメラに通すと、15分で英語ラベルが完成
- QR コードでオンライン翻訳メニューにリンクする方法もある(注文時にスマホで読み取り)
- 主力5品を選ぶ
- それぞれの名前・短い説明(10〜15単語)・価格を英語で書く
- メニュー横に貼る、またはQR コードでリンクする
例:「鶏の唐揚げ」→「Karaage — Japanese fried chicken, marinated and crispy. ¥850 (6 pieces)」
完璧な英語より、何が入っていて何ができるかが伝わることのほうが優先度が高い場面です。
誤解5:「観光客はリピートしないから無駄」
「1回来て終わりだから、SNSも口コミも投資効果がない」という思い込みです。
現実:- 訪日2回目以上のリピーター比率は国別で60〜70%、最上位は台湾客で67%
- リピートは「自店リピート」だけではなく、「日本リピート時の別観光客」も含む
- 口コミ・SNS・Googleマップでの紹介が、別の観光客の選択を生む波及効果
- 外国語の口コミに必ず英語で返信(中国語・韓国語の口コミ返信テンプレ)
- 返信の最後に「Looking forward to seeing you again next time you visit Japan」を添える
- 口コミ返信は新しい観光客が読む——直接の本人ではなく、未来の客への手紙です
リピートを「自店再来店」だけで測ると、観光客向けの投資はすべて赤字に見えます。しかし口コミ・SNSの拡散経由で来る別観光客を含めると、回収期間は短くなる傾向です。
5つの誤解、共通の正体は「やる前の見積もり」
5つを並べると共通点が見えます。どれも「やってみる前の見積もり」が過大です。
- 「英語できない」→ 観光客側が翻訳ツールを準備している
- 「うちは地味」→ 地味こそ観光客の本命
- 「単価が低い」→ 単価を隠している側が機会損失
- 「翻訳が面倒」→ 主力5品で15分
- 「リピートしない」→ 別観光客への波及で回収
5つ全部を一気にやる必要はありません。1つを15分で試して、来週もう1つのペースが続きます。
観光地立地なのに動けない状態を診断したい場合は、観光地なのに客が来ない飲食店オーナーへで、素通りされる5つの原因を1週間で自己診断できます。2026年のインバウンド地形図は2026年インバウンドの数字にまとめています。
今週試すこと
- Google マップで自店を検索し、英語圏の観光客の目線で「何を出している店か」「いくらか」が分かるか自分でチェック
- 主力5品の英語ラベルをスマホで15分で作る(Google翻訳カメラを使う)
- 「地元の常連客で賑わう店内」が伝わる写真を3枚、GBPに追加する
- 過去に届いた外国語の口コミがあれば、英語で1件返信する
- 5つの誤解のうち、自分がいちばん強く持っていたものを1つ書き出す
Kokoponは、LINE上でお店の写真とメッセージを送ると、観光客向けに自動翻訳してGoogleビジネスプロフィール・Instagram・LINE公式アカウントに同時配信するコーチ型ツールです。週次のミッションで「英語できない」「翻訳が面倒」を仕組みで解決する役割を目指しています。詳しくはトップページからご覧ください。
参考
よくある質問
- メニュー全部を翻訳しなくていいですか?
- 主力5〜10品とアレルギー表記の英語化で、観光客の判断に必要な情報の8割をカバーできる傾向があります。全品翻訳より、写真付きメニューの主力品にQR翻訳リンクを併設するほうが運用が続きやすくなります。
- 観光地から離れた立地でも観光客は来ますか?
- Google マップで「現在地周辺の飲食店」を検索する観光客の動線が、ここ数年で広がっています。観光地から徒歩15〜20分圏内であれば、地元客が行く店として観光客の選択肢に入りやすい傾向があります。距離より、Googleマップ上の情報量と多言語対応が判断材料です。
- 中国語・韓国語も対応すべきですか?
- 訪日客の構成比は2025年時点で韓国・中国・台湾・香港・米国・タイで上位を占めます。立地と客層によって優先順位が変わるので、最初は英語のみで足りる店が多く、半年後にGoogle ビジネスプロフィールの「言語別表示数」を見てから中国語・韓国語を追加する流れが現実的です。
- 「英語が話せるスタッフがいない」場合、何ができますか?
- 注文時の15フレーズとアレルギー対応の3フレーズを印刷してカウンターに置く、Google翻訳アプリの会話モードをスマホに用意する、の2つで初対応の8割は回ります。詳細は[飲食店で外国人客に使える英語15フレーズ](/blog/multilingual/foreign-customer-phrases-restaurant)をご参照ください。
- クレジットカード対応していないと観光客は来ませんか?
- 訪日客のキャッシュレス利用率は年々上がっていますが、現金のみの個人店でもGoogle マップに「現金のみ」を明記してあれば、その情報を見て事前に現金を準備して来店する観光客は一定数います。決済対応より、情報の透明性のほうが優先度が高い場面が多い傾向です。






